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明日に架ける橋

易のこと、音楽のこと、クルマのこと、その時どきの話題など、まぁ、気が向くままに書いています。

風山漸

53 風山漸(ふうざんぜん)
fuuzan.gif 艮下巽上(ごんか そんじょう)

八卦のgonsan-n.gif艮(ごん)の上に、sonfuu-n.gif巽(そん)を重ねた形。

漸は、段階を踏んでひとつずつ進む、という意。
この卦は艮を山とし、巽を木とすれば、山の上に木がある様子である。
山の上にある木は日当たり良好なので漸次すくすくと成長する。
だから漸と名付けられた。
また、艮を止まるとし、巽を従うとすれば、内に止まり守る徳を有しつつ、外にては人に巽(したが)うことになり、そうであるのなら、その道は必ず一歩ずつ確実に進むものである。
だから漸と名付けられた。
また、交代生卦法によれば、もとは天地否より来たものとする。
天地否の六三が進み上って四爻に居て正を得たのが、この風山漸である。
これは、内卦より外卦に出で、下卦より上卦に上がったとしても、その進むことは僅かに一位のみである。
このように、大いに進むのではなく、一歩ずつ漸次に進んでその序を越え過ごさないのであれば、正しい道を得ていることになる。
だから漸と名付けられた。

卦辞
漸、女帰吉、利貞、

漸(ぜん)は、女(おんな)帰(とつ)ぐごとくにして吉(きち)、貞(ただ)しきに利(よ)ろし、

易ができた頃は、「帰」という字は「かえる」という意のほかに、「とつぐ」=嫁入りという意でも多く用いられていた。
周の時代、女子が帰嫁(よめいり)するときは、まず、納采、問名、納吉、納徴、請期、親迎という六礼の次第があった。
ちなみに、日本の皇室の婚礼が、今でも「納采(のうさい)の儀」から始まるのは、これに基づいているのである。
ともあれ、この婚礼の次第のように、進むに序次の正しきに従うことが礼の基本である。
さて、これから結婚しようとするときには、生涯一緒に暮らしたいと思うものである。
すでに夫家に嫁いだら、夫に巽順(したが)って、その家に止まって生涯を終わるのが、女子の道である。
したがって、再び出て還る、すなわち離婚は眼中にない。
もっとも、現実の結婚生活が始まると、とても巽順でき兼ねる夫だったりなんてこともあり、当初の夢や理想のようにはいかないものだが。
それはともかく、この卦は天地否の六三が四爻に一歩進んで正を得、また巽(したが)って止まる様子でもある。
だから、物事を漸次進めるように、という意で、婚礼に譬えて、女帰ぐごとくにして吉、という。
そもそも進むときには、正を以ってしないといけない。
不正にしては、それは暴走であって、進むことを得ない。
だから、貞しきに利ろし、という。
なお、この利貞は、あくまでも漸次進む際の一般論であって、女子の貞節を指して言っているわけではない。


彖伝(原文と書き下しのみ)
漸之進也、進得位、往有功也、
漸(ぜん)之(の)進(すす)む也(や)、進(すす)んで位(くらい)を得(え)、往(ゆ)くこと功(こう)有(あ)る也(なり)、

女帰吉、止而巽、動不竆也、
女(おんな)帰(とつ)ぐごとくにして吉(きち)なりとは、止(とど)まって而(しこう)して巽(したが)い、動(うご)くこと竆(きゅう)せざる也(なり)、

利貞、当位剛得中、進以正可、以正邦也、
貞(ただ)しきに利(よ)ろしとは、位(くらい)に当(あた)って剛(ごう)中(ちゅう)を得(え)て、進(すす)むに正(ただ)しきを以(も)ってして、以(も)って邦(くに)を正(ただ)す可(べ)しと也(なり)、


象伝(原文と書き下しのみ)
山上有木漸、君子以居賢徳、善風俗、
山(やま)の上(うえ)に木(き)が有(あ)るは漸(ぜん)なり、君子(くんし)以(も)って賢徳(けんとく)を居(すえお)きて、風俗(ふうぞく)を善(よ)くす、


ここに書いているのは、江戸後期の名著、眞勢中州の『周易釈故』より抜粋し、現代語で意訳したものです。
漢字は原則として新字体で表記しています。
易の初歩的なことについては、
私のサイトの易学入門ページをご覧ください。
また、六十四卦それぞれの初心者向け解説は、オフラインでもできる無料易占いのページをご覧ください。占いながら各卦の意味がわかるようになっています。
なお易は、中国や日本だけではなく、遠くユダヤやローマにも多大な影響を及ぼしました。
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水上 薫

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ちなみに表紙の右下のほうに白線で示しているのは、08水地比の卦象です。
キリスト教のシンボル十字架と中心教義の「愛」は、08水地比の卦象がもらたす意味と一致しているのです。

(C) 学易有丘会


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