
40 雷水解(らいすいかい)
解 坎下震上(かんか しんじょう)
八卦の
坎(かん)の上に、
震(しん)を重ねた形。
解とは、解消、解決、解散といった意。
易位生卦法によれば、もとは水雷屯から来たものとする。
屯は険難の中で動く様子だったが、その屯の内卦の震が動き進んで坎の険難の外に出て、険難が解消したのが、この雷水解である。
だから解と名付けられた。
また、水雷屯のときには、震雷が下にあって上昇しようとし、坎水が上にあって下降しようとし、その結果として両者が交わっていたのだが、今、震雷が動いて上り、坎水の雨が和して下り、両者が交わらなくなったのが雷水解である。
これは雷と雨が解散した様子である。
だから解と名付けられた。
また、水雷屯の内卦の震が動き進んで、坎の大川を渉り切り、険難を脱出解決した様子である。
だから解と名付けられた。
また、六五の君は柔中の徳が有り、
九四執政の大臣とは陰陽正しく比し、九二剛中の大臣とは陰陽正しく応じている。
これは、六五の君がよく賢良の二大臣に委任し、二四の両大臣もまた共に剛健の才力を発揮して天下国家の険難を解決する才徳が有る様子である。
だから解と名付けられた。
卦辞
解、利西南、无攸往、其来復吉、有攸往夙吉、
解は、西南(せいなん)に利(よ)ろし、往(ゆ)く攸(ところ)无(な)くば、其(そ)れ来(き)たり復(かえ)りて吉(きち)、往(ゆ)く攸(ところ)有(あ)れば夙(はや)くして吉(きち)、
この卦は、来往生卦法によれば、もとは地水師から来ていたとする。
地水師の内卦の外より一陽剛がやって来て、その上卦坤の体中に入り九四となったのである。
坤は西南の方位であり、衆とし、師とは軍旅のことである。
そもそも天下の険難を解くためには武力行使も必要である。
今、九四成卦の主として、摂政の位に居る。
これは西南坤の方に往きて衆を得た様子である。
だから、西南に利ろし、という。
そして、険難が解消して最早解くべきところがないのであれば、さらに何かをするのではなく、安静にしてその位を守るようにするのがよい。
だから、往く攸无くば、其れ来たり復りて吉、という。
往くというのは場所の移動ではなく、行動する、というニュアンスである。
来たり復りて、というのは、往くという字に対するものであり、行動する前の、平時の状態に戻ることをいう。
また、この卦は、もとは雷地予から来たともする。
雷地予の卦の中へ一陽剛が外卦の外からやって来て、九二となり、内卦の主となったのが、この雷水解である。
これは、険難が解ければ、人々は予楽和順する、という様子を示しているが、このときには、九二は来たり復って中を得ているわけである。
これもまた、来たり復って吉、という所以である。
しかし、もし、未だ解消していない険難があるのならば、速やかに解くべきである。
時は得難く失いやすいものである。
どうしようどうしようと躊躇していると、タイミングを逸し、速やかに行動すれば解決できたものが、解決できなくもなる。
だから、往く攸有れば夙くして吉、という。
彖伝(原文と書き下しのみ)
解、険以動、動而免乎険、解、
解(かい)は、険(なや)みにして以(も)って動(うご)く、動(うご)いて而(しこう)して険(なや)みを免(まぬか)るは、解(かい)なり、
解、利西南、往得衆也、
解(かい)は、西南(せいなん)に利(よ)ろしとは、往(ゆ)きて衆(しゅう)を得(え)れば也(なり)、
无攸往、其来復吉、乃得中也、
往(ゆ)く攸(ところ)无(な)くば、其(そ)れ来(きた)り復(かえ)りて吉(きち)なりとは、乃(すなわ)ち中(ちゅう)を得(え)る也(なり)、
有攸往、夙吉、往有功也、
往(ゆ)く攸(ところ)有(あ)らば、夙(はや)くして吉(きち)なりとは、往(ゆ)けば功(こう)有(あ)らんと也(なり)、
天地解、而雷雨作、雷雨作、百果艸木皆甲拆、解之時、大矣哉
天地(てんち)解(と)きて、而(しこう)して雷雨(らいう)作(おこ)る、雷雨(らいう)作(おこ)って、百果(ひゃっか)艸木(そうもく)甲拆(こうたく)す、解(かい)之(の)時(とき)、大(おお)いなる哉(かな)、
象伝(原文と書き下しのみ)
雷雨作、解、君子以赦過宥罪、
雷雨(らいう)作(おこ)るは、解(かい)なり、君子(くんし)以(も)って過(あやま)ちを赦(ゆる)し、罪(つみ)を宥(ゆる)す、
ここに書いているのは、江戸後期の名著、眞勢中州の『周易釈故』より抜粋し、現代語で意訳したものです。
漢字は原則として新字体で表記しています。
易の初歩的なことについては、
私のサイトの易学入門ページをご覧ください。
また、六十四卦それぞれの初心者向け解説は、オフラインでもできる無料易占いのページをご覧ください。占いながら各卦の意味がわかるようになっています。
なお易は、中国や日本だけではなく、遠くユダヤやローマにも多大な影響を及ぼしました。
聖書と易経を比較すれば容易にわかることなのですが、キリスト教は易の理論を巧みに利用して作られた宗教だったのです。
詳細は拙著『聖書と易学-キリスト教二千年の封印を解く』についてのページをご覧ください。
ちなみに表紙の右下のほうに白線で示しているのは、08水地比の卦象です。
キリスト教のシンボル十字架と中心教義の「愛」は、08水地比の卦象がもらたす意味と一致しているのです。
(C) 学易有丘会

八卦の


解とは、解消、解決、解散といった意。
易位生卦法によれば、もとは水雷屯から来たものとする。
屯は険難の中で動く様子だったが、その屯の内卦の震が動き進んで坎の険難の外に出て、険難が解消したのが、この雷水解である。
だから解と名付けられた。
また、水雷屯のときには、震雷が下にあって上昇しようとし、坎水が上にあって下降しようとし、その結果として両者が交わっていたのだが、今、震雷が動いて上り、坎水の雨が和して下り、両者が交わらなくなったのが雷水解である。
これは雷と雨が解散した様子である。
だから解と名付けられた。
また、水雷屯の内卦の震が動き進んで、坎の大川を渉り切り、険難を脱出解決した様子である。
だから解と名付けられた。
また、六五の君は柔中の徳が有り、
九四執政の大臣とは陰陽正しく比し、九二剛中の大臣とは陰陽正しく応じている。
これは、六五の君がよく賢良の二大臣に委任し、二四の両大臣もまた共に剛健の才力を発揮して天下国家の険難を解決する才徳が有る様子である。
だから解と名付けられた。
卦辞
解、利西南、无攸往、其来復吉、有攸往夙吉、
解は、西南(せいなん)に利(よ)ろし、往(ゆ)く攸(ところ)无(な)くば、其(そ)れ来(き)たり復(かえ)りて吉(きち)、往(ゆ)く攸(ところ)有(あ)れば夙(はや)くして吉(きち)、
この卦は、来往生卦法によれば、もとは地水師から来ていたとする。
地水師の内卦の外より一陽剛がやって来て、その上卦坤の体中に入り九四となったのである。
坤は西南の方位であり、衆とし、師とは軍旅のことである。
そもそも天下の険難を解くためには武力行使も必要である。
今、九四成卦の主として、摂政の位に居る。
これは西南坤の方に往きて衆を得た様子である。
だから、西南に利ろし、という。
そして、険難が解消して最早解くべきところがないのであれば、さらに何かをするのではなく、安静にしてその位を守るようにするのがよい。
だから、往く攸无くば、其れ来たり復りて吉、という。
往くというのは場所の移動ではなく、行動する、というニュアンスである。
来たり復りて、というのは、往くという字に対するものであり、行動する前の、平時の状態に戻ることをいう。
また、この卦は、もとは雷地予から来たともする。
雷地予の卦の中へ一陽剛が外卦の外からやって来て、九二となり、内卦の主となったのが、この雷水解である。
これは、険難が解ければ、人々は予楽和順する、という様子を示しているが、このときには、九二は来たり復って中を得ているわけである。
これもまた、来たり復って吉、という所以である。
しかし、もし、未だ解消していない険難があるのならば、速やかに解くべきである。
時は得難く失いやすいものである。
どうしようどうしようと躊躇していると、タイミングを逸し、速やかに行動すれば解決できたものが、解決できなくもなる。
だから、往く攸有れば夙くして吉、という。
彖伝(原文と書き下しのみ)
解、険以動、動而免乎険、解、
解(かい)は、険(なや)みにして以(も)って動(うご)く、動(うご)いて而(しこう)して険(なや)みを免(まぬか)るは、解(かい)なり、
解、利西南、往得衆也、
解(かい)は、西南(せいなん)に利(よ)ろしとは、往(ゆ)きて衆(しゅう)を得(え)れば也(なり)、
无攸往、其来復吉、乃得中也、
往(ゆ)く攸(ところ)无(な)くば、其(そ)れ来(きた)り復(かえ)りて吉(きち)なりとは、乃(すなわ)ち中(ちゅう)を得(え)る也(なり)、
有攸往、夙吉、往有功也、
往(ゆ)く攸(ところ)有(あ)らば、夙(はや)くして吉(きち)なりとは、往(ゆ)けば功(こう)有(あ)らんと也(なり)、
天地解、而雷雨作、雷雨作、百果艸木皆甲拆、解之時、大矣哉
天地(てんち)解(と)きて、而(しこう)して雷雨(らいう)作(おこ)る、雷雨(らいう)作(おこ)って、百果(ひゃっか)艸木(そうもく)甲拆(こうたく)す、解(かい)之(の)時(とき)、大(おお)いなる哉(かな)、
象伝(原文と書き下しのみ)
雷雨作、解、君子以赦過宥罪、
雷雨(らいう)作(おこ)るは、解(かい)なり、君子(くんし)以(も)って過(あやま)ちを赦(ゆる)し、罪(つみ)を宥(ゆる)す、
ここに書いているのは、江戸後期の名著、眞勢中州の『周易釈故』より抜粋し、現代語で意訳したものです。
漢字は原則として新字体で表記しています。
易の初歩的なことについては、
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(C) 学易有丘会


