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明日に架ける橋

易のこと、音楽のこと、クルマのこと、その時どきの話題など、まぁ、気が向くままに書いています。

離為火

30 離為火(りいか)
riika.gif 離下離上(りか りじょう)

八卦のrika-n.gif離(り)を重ねた形。

この卦は、八卦の離を重ねた卦。
離とは、麗(つ)く、付着する、つらなる、かかる、つながる、といった意。
同じ八卦を重ねた卦は、その八卦の名称で呼ぶ。
八卦の離は、一陰の主画が柔弱な自身を、二陽の剛強な者の中に付着して守ってもらっている形である。
これは、陰であるがゆえに、柔和にして麗き順わざるを得ないのであるが、六画重卦の離為火も、その特性象義は基本的に同じである。
だから三画八卦も六画重卦も、同じ名で呼ばれるのである。

なお、離の字は、普通は「はなれる」という意であるが、易ができた頃は、逆の「付着する」という意だったのである。
離の卦象には、「はなれる」という意はまったくないのである。

卦辞
離、亨、利貞、畜牝牛吉、

離は亨(とお)る、貞(ただ)しきに利(よろ)し、牝牛(ひんぎゅう)を畜(やしな)えば吉、

そもそも離は、坤の一陰を中画に得て、柔順にして二陽の明者に麗いたのであって、これが三画八卦の離の象義である。
六画重卦の場合も、六二柔順中正の徳を以って、外卦の明者に麗き順っているのであって、そうであるからこそ、亨通するのである。
だから、離は亨る、という。

さて、その麗くということには、必ず利害邪正の両道がある。
正しい道と、公な道とに麗くときには、善にして亨通する。
正しくない道と私欲の道とに麗くときには、不善にして亨通することはない。

もとより八卦の離は、火とし、心とする。
火は幽暗を照らし、煮炊きをして食を調える大事な作用功徳を具えている。
しかし、その取り扱いを誤ると、火事を起こし、大切なものすらも焼き滅ぼしてしまう。
人の心にしても、正しいことに麗き、善なることに用いれば、身を修め、家を済(ととの)え、国天下をも治めることができる。
しかし、正しくないことに麗き、不善なることに用いるときには、忽ち身を滅ぼし、家を破り、国天下をも喪うに至るものである。
これをもって、人の心の火の用心、取り扱いは至って厳重に、最も大切にし、常に戦々兢々として、その麗くところ、用いるところを惧れ慎むべきなのである。
だから、その用心の大切さを強調し、貞しきに利ろし、という。

牝牛とは、至って柔順の比喩である。
坤為地の卦では牝馬を以って柔順の意義を諭し、この離為火の卦では、牝牛を以って柔順の意義を諭している。
馬も牛も、共によく人に馴れ従う柔順の性質があるわけだが、次のような違いがある。
馬は蹄がひとつで(奇蹄類)、奇数は陽、その行くことは健やかで陽の性質である。
対する牛は蹄がふたつで(偶蹄類)、偶数は陰、その行くこと緩やかで陰の性質である。
このように、牛は馬と違って、その根本的性質からして陰であるのだから、その柔順さは至極である。
また、卦象を観ると、坤は純陰にして柔順の卦ではあるが、同じ陰が三本相連なっている。
一方の離は、一陰二陽の卦象であるが、これは一陰の微弱なるを以って、上下両陽剛の中に麗き従っているのである。
陰同士が連なっているのではなく、陽の中に陰が麗き従うには、陽の反感を買わないように、至って柔順でなければならない。
だから離を柔順の至極とする。
離の火を扱うことも、至って柔順ではなく、不善な扱いであれば、忽ち火事を招き、大害が有る。
だから、その火を扱う心がけで物事に対処せよと諭すために、柔順至極であることを牝牛を畜うことに喩え、そのようであれば吉だとして、牝牛を畜えば吉、という。


彖伝(原文と書き下しのみ)
離、麗也、柔麗乎中正、故亨、是以畜牝牛吉也、
離(り)は、麗(つ)く也(なり)、柔(じゅう)中正(ちゅうせい)に麗(つ)けり、故(ゆえ)に亨(とお)る、是(これ)を以(も)って牝牛(ひんぎゅう)を畜(やしな)えば吉(きち)なる也(なり)、

日月麗乎天、百穀艸木、麗乎地、重明以麗乎正、乃化成天下、
日月(ひづき)は天(てん)に麗(つ)き、百穀(ひゃっこく)艸木(そうもく)は、地(ち)に麗(つ)き、重(かさ)ねたる明(あき)らかさは以(も)って正(ただ)しきに麗(つ)きて、乃(すなわ)ち天下(てんか)を化成(かせい)すべし、


象伝(原文と書き下しのみ)
明両、作離、大人以継明照于四方、
明(めい)を両(ふた)つ作(つく)るは離(り)なり、大人(たいじん)以(も)って明(めい)に継(つ)ぎ四方(しほう)を照(て)らすべし、


ここに書いているのは、江戸後期の名著、眞勢中州の『周易釈故』より抜粋し、現代語で意訳したものです。
漢字は原則として新字体で表記しています。
易の初歩的なことについては、
私のサイトの易学入門ページをご覧ください。
また、六十四卦それぞれの初心者向け解説は、オフラインでもできる無料易占いのページをご覧ください。占いながら各卦の意味がわかるようになっています。
なお易は、中国や日本だけではなく、遠くユダヤやローマにも多大な影響を及ぼしました。
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(2005/04)
水上 薫

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ちなみに表紙の右下のほうに白線で示しているのは、08水地比の卦象です。
キリスト教のシンボル十字架と中心教義の「愛」は、08水地比の卦象がもらたす意味と一致しているのです。

(C) 学易有丘会


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