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明日に架ける橋

易のこと、音楽のこと、クルマのこと、その時どきの話題など、まぁ、気が向くままに書いています。

山火賁

22 山火賁(さんかひ)
sanka.gif 離下艮上(りか ごんじょう)

八卦のrika-n.gif離(り)の上に、gonsan-n.gif艮(ごん)を重ねた形。

賁とは飾るという意。
上卦艮を山とし、下卦離を火とすれば、山の下に火がある様子。
山の下に火があれば、その火は必ず山を照らし、草木は飾りのように輝く。
例えば夕陽が山裾を照らしている様子である。
だから賁と名付けられた。
また、八卦の離は陰を陽で包んだ形であって、艮は陰の上を陽で覆っている形である。
陰陽を美醜で対比すると、陰=醜、陽=美、となる。
したがって、離、艮、ともに陽の美しさをもって陰の醜さを包み覆っていることになる。
飾るといのは、まさにそういうことである。
だから賁と名付けられた。
また、来往生卦法によると、もとは山天大畜から来たとする。
一陰柔の爻が山天大畜の外からやって来て、内卦の二に麗(つ)いて離明の主爻となったのが、この山火賁である。
山天大畜のときには、剛(かた)く健やかにして止まるという要素はあるが、離明の徳を欠いている。
質実剛健だけでは、息が詰まる。
少しは飾りも欲しいものである。
今、来往して山火賁の卦となるときには、下卦乾の純陽の中に一陰柔の和を得て離となり、文明の徳を備え、飾ったことになる。
だから賁と名付けられた。
また、交代生卦法によれば、もとは地天泰から来たとする。
地天泰の九二と上六が交代したのである。
地天泰は、純陰純陽の組み合わせであるがゆえに、いろどりはない。
それが今、交代して山火賁となると、陰陽交錯のいろどりができ、卦が飾られたではないか。
だから賁と名付けられた。
また、この卦は、図らずも天地人の三才の文(あや)を兼ね備えている。
まず、地天泰の九二が上って、山火賁の上九となるのは、陰を陽に飾ることであって、これは天文である。
地天泰の上六が下り来て、山火賁の六二となるのは、陽を陰に飾ることであって、これは地文である。
離を文明、艮をとどまる、として「文明にしてとどまる」とこの卦を読めば、これは人文である。
だから、賁と名付けられた。
また、離を文明とし、艮を篤実とすれば、文明にして篤実に止まる、となり、これは君子の飾るべき徳である。
だから賁と名付けられた。
また、離を美とし、艮を止めるとすれば、美しさを止める、ということになるが、美しさをいつまでも止めようとするのが、飾ることでもある。
だから賁と名付けられた。

卦辞
賁、亨、小利有攸往、

賁(ひ)は、亨(とお)る、小(すこ)しく往(ゆ)く攸(ところ)有(あ)るに利(よ)ろし、

およそ事物は、実質をもって根本とする。
しかし、文飾もなければいけない。
論語にも、文質彬彬(ひんひん)として然る後に君子なり=文(装飾)質(質朴)の両方が並び備わってこそ君子なのだ、とある。
今、この卦は、飾り=文をのみ主として、その質の徳には言及しない。
とすると、元いに亨る、とまでは言えないので、単に、亨る、とのみ言う。
また、交代生卦法によれば、地天泰の上六が二爻に来て、中正を得て、離の文明の主爻となったのである。
だから亨通する要素がある。
しかし、文だけではなく、文質両方が備わって、初めて大事を成し遂げることに、堪えられるのである。
だから、小しく往く攸有るに利ろし、という。
小しくとは、ちょっとした、といった程度である。
また、地天泰の九二が往きて上九に居り、柔に飾るとしても、中正を得ていないので、これもまた、小事ならなんとかできるとしても、大事を成すにはよくないのである。

なお、中正というのは、二爻が陰、五爻が陽であることを言う。
そもそも易は、陽位=下から一・三・五番目の爻が陽、陰位=下から二・四・六番目の爻が陰、であることを正しいという。 陽は奇数、陰は偶数である。
また中庸という言葉があるように、中を得る=真ん中の位置にある、ということが大事なので、内卦と外卦、それぞれの真ん中すなわち二爻と五爻が一番よい位置となるのである。


彖伝(原文と書き下しのみ)
賁、柔来而文剛、故亨、
賁(ひ)は、柔(じゅう)来(き)たって而(しこう)して剛(ごう)に文(かざ)る、故(ゆえ)に亨(とお)るなり、

分剛上而文柔、故小利有攸往、
剛(ごう)を分(わか)ち上(あげ)て柔(じゅう)に文(かざ)れり、故(ゆえ)に小(すこ)しく往(ゆ)く攸(ところ)有(あ)るに利(よ)ろし、

剛柔交錯天文也、文明以止人文也、
剛柔(ごうじゅう)交錯(こうさく)は天文(てんぶん)なる也(なり)、文明(ぶんめい)にして以(も)って止(とど)まるは人文(じんぶん)なる也(なり)、

観乎天文、以察時変、観乎人文、以化成天下、
天文(てんぶん)を観(み)て、以(も)って時変(じへん)を察(さ)っしね人文(じんぶん)を観(み)て、以(も)って天下(てんか)を化成(かせい)す、

象伝(原文と書き下しのみ)
山下有火、賁、君子以明庶政、无敢折獄、
山(やま)の下(した)に火(ひ)有(あ)るは、賁(ひ)なり、君子(くんし)以(も)って庶政(しょせい)を明(あき)らかにすとも、敢(あ)えて獄(うったえ)を折(わか)つこと无(な)し、


ここに書いているのは、江戸後期の名著、眞勢中州の『周易釈故』より抜粋し、現代語で意訳したものです。
漢字は原則として新字体で表記しています。
易の初歩的なことについては、
私のサイトの易学入門ページをご覧ください。
また、六十四卦それぞれの初心者向け解説は、オフラインでもできる無料易占いのページをご覧ください。占いながら各卦の意味がわかるようになっています。
なお易は、中国や日本だけではなく、遠くユダヤやローマにも多大な影響を及ぼしました。
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(2005/04)
水上 薫

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ちなみに表紙の右下のほうに白線で示しているのは、08水地比の卦象です。
キリスト教のシンボル十字架と中心教義の「愛」は、08水地比の卦象がもらたす意味と一致しているのです。

(C) 学易有丘会


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