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明日に架ける橋

易のこと、音楽のこと、クルマのこと、その時どきの話題など、まぁ、気が向くままに書いています。

地沢臨

19 地沢臨(ちたくりん)
chitaku.gif 兌下坤上(だか こんじょう)

八卦のsdataku-n.gif兌(だ)の上に、konchi-n.gif坤(こん)を重ねた形。

臨とは、臨(のぞ)む、臨み見る、という意。
この卦は、上の四陰爻から下の二陽爻を臨み見る様子。
だから臨と名付けられた。
これは風地観の、四陰爻から二陽爻を仰ぎ見るということの反対である。
また、下二陽爻から上四陰爻を臨み見る様子であるとともに、上下互いに臨み見る様子でもある。
だから、臨と名付けられた。
また、地雷復は一陽が始めて生じた卦であり、この地沢臨は陽が二本に増えた卦である。
陽が増えることは衆人の願い臨むところである。
だから、臨と名付けられた。
また、陽が増えるということは、君子の道が長じることであって、君子の道が長じることは、衆人の願い臨むところである。
だから、臨と名付けられた。
また、兌を悦ぶとし、坤を順うとすれば、悦んで順う様子である。
世の中には、不満だけど順わなければならないことが多い。
悦んで順えることばかりなら、これほど素晴しいことはなく、これこそ誰しもが臨むことである。
だから、臨と名付けられた。
また、坤を母とし、兌を少女とすれば、母子が相互に臨んでいる様子である。
だから、臨と名付けられた。
また、兌を沢、坤を地とすれば、沢の上に地がある様子だが、地上の水は流れて沢に入り集まって増え、沢の中の水は人々に汲み上げられることで地上の乾きを潤し助ける。
これは、地と沢とが相互に臨み合っている様子である。
だから、臨と名付けられた。

卦辞
臨、元亨、利貞、至于八月、有凶、
臨(りん)は、元(おお)いに亨(とお)る、貞(ただ)しきに利(よ)ろし、八月(はちがつ)に至(いた)りて凶(きょう)有(あ)らん、

およそ事業というものは、その願い臨むことの情が正しく、志も堅く、行いも篤いときには、その事業は必ず遂げられるものである。
だから、臨は元いに亨る、という。
しかし邪な情に流され、自己中心的になり、自分だけの利益を考えるようでは、臨みは儚く消えてしまうもの。
だから、貞しきに利ろし、という。
八月とは、十二消長で風地観に当たる月である。
十二消長では、地沢臨は旧暦十二月の卦であり、正月は地天泰、二月は雷天大壮、三月は沢天夬、四月は乾為天、五月は天風姤、六月は天山遯、七月は天地否、八月は風地観、九月は山地剥、十月は坤為地、十一月は地雷復である。
八月の風地観は、地沢臨の顚倒卦(上下逆さにした卦)であるとともに、雷天大壮の裏卦であるので、これを大衰の卦ともいう。
地沢臨は二陽下に長じる卦であり、風地観は二陽上に衰える卦である。
したがって、今は地沢臨で陽が長じて吉であっても、陰陽消長は天地の定理にして、いつかは陽が衰え、陰が長じて風地観となるときも来るのであって、そうなったら凶となることも有るから、やるべきことは早くやってしまわないといけないのである。
だから、八月に至れば凶有らん、という。


彖伝(原文と書き下しのみ)
臨、剛浸而長、説而順、剛中而応
臨(りん)は、剛(ごう)浸(すす)んで而(しこう)して長(ちょう)ず、説(よろこ)んで而(しこう)して順(したが)う、剛中(ごうちゅう)にして而(しこう)して応(おう)あり、

大亨以正、天之道也、
大(おお)いに亨(とお)るに正(ただ)しきを以(も)ってするは、天之道(てんのみち)也(なり)、

至于八月、有凶、消不久也、
八月(はちがつ)に至(いた)って、凶(きょう)なること有(あ)りとは、消(しょう)すること久(ひさ)しからざると也(なり)、


象伝(原文と書き下しのみ)
沢上有地、臨、君子以教道衆无竆、容保民、无畺、
沢(さわ)の上(うえ)に地(ち)が有(あ)るは、臨(りん)なり、君子(くんし)以(も)って衆(しゅう)を教道(きょうどう)すること竆(かぎ)り无(な)く、民(たみ)を容保(ようほ)すること、畺(かぎ)り无(な)し、


ここに書いているのは、江戸後期の名著、眞勢中州の『周易釈故』より抜粋し、現代語で意訳したものです。
漢字は原則として新字体で表記しています。
易の初歩的なことについては、
私のサイトの易学入門ページをご覧ください。
また、六十四卦それぞれの初心者向け解説は、オフラインでもできる無料易占いのページをご覧ください。占いながら各卦の意味がわかるようになっています。
なお易は、中国や日本だけではなく、遠くユダヤやローマにも多大な影響を及ぼしました。
聖書と易経を比較すれば容易にわかることなのですが、キリスト教は易の理論を巧みに利用して作られた宗教だったのです。
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(2005/04)
水上 薫

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ちなみに表紙の右下のほうに白線で示しているのは、08水地比の卦象です。
キリスト教のシンボル十字架と中心教義の「愛」は、08水地比の卦象がもらたす意味と一致しているのです。

(C) 学易有丘会


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