
平成21年5月13日
新聞の折込チラシに、お墓の広告が入っていた。そう言えば、平成に入った頃からの日本は、
何事も和の伝統を軽視し、洋風ばかりを求めているようだ。
そんな中、お墓も例外ではない。
昔の日本では、縦型のお墓が当たり前だった。
それが、いつ頃からか、西洋の模倣をした横型墓が登場し、
霊園業者も横型墓を広く宣伝している。
しかし、お墓の意義を何も考えず、
ただ西洋の模倣をするのは、果たしてよいことなのだろうか?
西洋における墓は、埋葬場所を示す標識に過ぎない。
だから、お墓に手を合わせて拝むこともない。
そもそも西洋では、キリスト教の考え方に基づき、
死者や先祖を敬うという気持ちはない。
対する日本では、死者や先祖を敬うためにお墓はある。
だから、お墓に手を合わせて拝む。
拝むとき、相手が自分の目線より低い位置にいたら、
それは相手を敬っていることにはならない。
少なくとも、しゃがんで手を合わせて拝むとき、
自分の目線よりも高い位置にお墓の最上部がなければいけない。
ご先祖様は目上であって、決して目下ではないのだ。
したがって、縦型のお墓が最も合理的なのだ。
洋型墓は、まるで家畜やペットの墓のようだ、
と、私は思う。
そういう伝統的な価値観は、劣ったものなのだろうか?
人間は平等なんだから、先祖だからと言って、敬う必要はない、
と考えている人たちは、西洋風の横型墓を歓迎するのだろう。
しかし、そういう平等主義に凝り固まった人たちが闊歩すると、
人間は利己主義になり、社会は乱れるものだ。
そもそも西洋には、日本でいう「敬う」という考え方はない。
英語のrespectが「敬う」という意味だとされているが、
実際には、いささかニュアンスが違う。
respectには、そもそも「存在価値を認める」といった程度の意味しかない。
挨拶の違いも、よい例だろう。
日本人は挨拶のとき、互いに頭を下げておじきをする。
互いに、相手に敬意を示しているのである。
これが西洋だと、決して頭を下げない。
その代わりに、握手をする。
握手は互いが対等な立場だということを前提とした中での、
親しみを表す行為に過ぎない。
とすると、
横型墓が増えれば、
それだけ人々の心から「敬う」という気持ちは薄れ、
引いてはさらに拝金主義が進み、
殺伐とした世の中になってしまうことだろう。
形だけ模倣して、それが何に由来しているのかは意に介さない。
西洋の植民地ならば、それも仕方ないが、
独立国として、西洋とは異なる文化伝統を育んできた国として、
そんなことでよいのだろうか。
お墓の折込チラシを見ながら、ふと思った。


