明日に架ける橋

易のこと、音楽のこと、クルマのこと、その時どきの話題など、まぁ、気が向くままに書いています。

火沢睽

38 火沢睽(かたくけい)
kataku.gif 兌下離上(だか りじょう)

八卦のsdataku-n.gif兌(だ)の上に、rika-n.gif離(り)を重ねた形。

睽とは背くという意。
この卦は離火が上に在り、兌沢が下に在るが、火は上に燃え上がり、沢を流れる水は低い方へ向かう。
したがって、両者が目指す方向は逆であり、背いていることになる。
だから睽と名付けられた。
また、離火が上にあり、兌水が下にあれば、水と火は交わらず、これも両者が背いていることになる。
交わるとは、相互に作用を及ぼし合うということであって、火の上に水をかければ火は消え、水を入れた鍋を火の上に置けば中の水は温まる、ということである。
しかしこの卦のように、火が上で水が下だと、例えば水の上に火を近づけても何も変化がないように、両者は何も作用を及ぼし合わないのである。
だから両者は背いているとして、睽と名付けられた。

なお、火を上にして水を下にするのは、火水未済も同じだが、火水未済は離火と坎水という正対の卦の組み合わせであり、この火沢睽は離火と兌水で正対の組み合わせではない。
正対とは、表裏の関係にある卦のことで、坎水の裏卦は離火だが、兌水の裏卦は艮山である。
正対であれば、その情は互いに通じるものがあるが、正対でなければ、その情は疎かにして背くものである。
したがって、坎水と離火の場合は、たとえ交わらなくても互いに背くまでのことはないのである。
これに対し、この卦は兌水と離卦という正対ではない組み合わせだから、交わり感じるところがなく、両者が相対するれば、その情は必ず背くのである。
だから睽となづけられた。

また、この卦は離の中女が上に在り、兌の少女が下に居る形でもあり、これは二女同居の様子である。
しかし、二女が同じく父母の家に生育するとしても、何れは別々のところへ嫁ぐことになる。
したがって、その思うところもまた同じではなく、背くことになる。
だから睽と名付けられた。
また、易位生卦法によれば、もとは沢火革から来たものとする。
沢火革の離が下から動いて上がり、兌水が上から動いて下ったのが、この火沢睽である。
これは、これまでは互いに行く方向が向き合っていたのが、その方向へ行ってしまったばかりに、あとは背き離れてしまうしかない状態になった様子である。
だから睽と名付けられた。

ところで、「そむく」という意の字は、背く、乖く、などもあるが、何故、他ではあまり使われることのない睽が用いられたのだろうか。
これは、睽の字が、この卦の形を表現しているからである、というか、この卦の形から睽は作られた字なのである。
睽は、目と癸の組み合わせである。
上卦の離は火であるとともに人体では目に配される。
背くことを反目するというように、目は背くことを表現する重要なポイントである。
一方、下卦の兌は、「はかる」という意味を持つとともに、兌沢に水が流れることから、水を意味する弟分の卦である。
弟分というからには、兄がいるわけだが、それは言うまでもなく坎水である。
十干で水を意味するのは、壬(みずのえ=水の兄)と癸(みずのと=水の弟)であり、壬癸はともに北方に位置する。
北は、君子南面のときの背中が向いている方角である。
だから背の字には「そむく」という意味があるのだが、その北を指す十干の壬癸のうち、癸という字には、兌が持つ「はかる」という意味もある。
そこで、上卦の離から引き出した目と下卦兌から引き出した癸を並べたのが、この睽なのである。

卦辞
睽、小事吉、

睽は、小事(しょうじ)には吉(きち)、

何かをやろうとするときは、まず人の和を大事にしないといけない。
しかしこの卦は、背き離れる様子である。
これでは、大事を成すことは無理である。
また、内卦の兌を悦ぶとし自分とし、外卦の離を麗(つ)くとして相手とすれば、自分が悦んで明らかな相手に麗く様子である。
自分は明らかに物事を見ることはできなくても、明らかに物事を見られる相手に、仕方なくではなく、悦んで麗くのであれば、小事ならなんとかなるものである。
だから、小事には吉、という。
また、来往生卦法によれば、もとは天沢履から来たとする。
天沢履の卦中へ、六五の一陰が卦の外から進み上り、中を得て九二の剛に応じたのがこの火沢睽である。
天沢履のときは、柔中の徳を得ず、なおかつ二五の応も無かったが、今六五が上り往きて中徳を得て離明の主爻となり、剛中九二に応じている。
これは、六五の君主が柔中にして、九二の剛中の臣に輔(たす)けられる様子である。
とすると、大事を決行するにもよさそうではあるが、今は睽の背くときであるとともに、進み上ったのは弱い陰柔だから大事は無理だとして、小事には吉、という。


ここに書いているのは、江戸後期の名著、眞勢中州の『周易釈故』より抜粋し、現代語で意訳したものです。
漢字は原則として新字体で表記しています。
易の初歩的なことについては、
私のサイトの易学入門ページをご覧ください。
また、六十四卦それぞれの初心者向け解説は、オフラインでもできる無料易占いのページをご覧ください。占いながら各卦の意味がわかるようになっています。
なお易は、中国や日本だけではなく、遠くユダヤやローマにも多大な影響を及ぼしました。
聖書と易経を比較すれば容易にわかることなのですが、キリスト教は易の理論を巧みに利用して作られた宗教だったのです。
詳細は拙著『聖書と易学−キリスト教二千年の封印を解く』についてのページをご覧ください。

(C) 学易有丘会

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